
音楽が最高なら、それだけで価値がある─。
才能に溢れ、薬物に溺れたピアニストの、
誰も知らない”ヒューマン”ノンフィクション。
2013年/アメリカ/日本公開:2026年5月29日/98分/1.78:1/ 原題:BAYOU MAHARAJAH/日本語字幕:小山朋子/字幕監修:ピーター・バラカン/
配給・宣伝:キングレコード
5.29FRI シネマート新宿、恵比寿ガーデンシネマ、アップリンク吉祥寺ほか
全国ロードショー
STAFF/CAST
監督:リリー・キーバー
出演:ジェイムズ・ブッカー、ドクター・ジョン、ハリー・コニックJr.、チャールズ・ネヴィル、アラン・トゥーサン、アーマ・トーマス、ヒュー・ローリー、ジョー・ボイドほか
ABOUT THE MOVIE
ニュー・オーリンズ出身の偉大なアーティストは数多いが、日本において“ジェイムズ・ブッカー”の名前はあまり知られていないのではないだろうか。
本名ジェイムズ・キャロル・ブッカー3世。あのドクター・ジョンにオルガンを教え、彼をして「ニュー・オーリンズが生んだ最高の黒人、ゲイ、ジャンキー、片目のピアノの天才」と言わしめた孤高の天才ピアニスト。クラシックからジャズ、R&B、ロックなどのジャンルを横断する超絶テクニシャンであり、歌も達者なアーティストであるにもかかわらず、彼は薬物・アルコール中毒、同性愛、精神疾患など、多くの問題を抱えた人物でもあった。奇言・奇行の噂は枚挙にいとまなく、入所歴まである問答無用のダメ人間。だが、ひとたびピアノに向かえば、そのプレイは軽々とジャンルを超えた神々しいまでの輝きを放つ─。その茶目っ気たっぷりなキャラクターからは破滅型人間に特有な悲壮感など微塵も感じられない。片目のハンデを逆手に取り、常に粋な眼帯を装着したルックスも彼の愛すべきチャームポイントのひとつなのだ。
わずか43歳という短い人生を生まれ故郷ニュー・オーリンズに捧げた、この知られざる個性派ミュージシャンの生涯を、エモーショナルな演奏シーンをふんだんに盛り込み紐解いていく、エキセントリックな音楽“ヒューマン”ノンフィクション。ハイライトになるような華々しいキャリアはない。だが、“音楽が最高なら、それだけで価値がある”─本作は心の底からそう思わせてくれる映画だ。


PROFILE
ジェイムズ・キャロル・ブッカー
JAMES CARROLL BOOKER Ⅲ
1939年12月17日、米ルイジアナ州ニュー・オーリンズで牧師の息子として生まれる。彼は幼い頃から鍵盤楽器に興味を示し、父親の教会でオルガンを弾くようになった。
10代になったブッカーは次第にその頭角を現し、11歳で地元のゴスペルラジオ局でピアノを披露するようになる。14歳のときにはインペリアル・レコードでリトル・ブッカー名義で初のレコーディングを行い、また、同レーベルのスタジオ・ミュージシャンとして活動を開始する。
1961年、ソロ名義のインストゥルメンタル・シングル「Gonzo」をリリース。これがスマッシュヒットとなり、60年代には主にセッション・ミュージシャンとして数多くのアーティストのレコーディングやツアーに参加した。当時彼がバックを務めたアーティストには、ウィルソン・ピケット、B.B.キング、ロイド・プライス、ジュニア・パーカー、ファッツ・ドミノ、リトル・リチャードなど錚々たる面子がいる。
1967年、ヘロインの不法所持で有罪となり、アンゴラ刑務所に1年間服役。このため一時的に活動の中断を余儀なくされたが、出所後すぐにセッション・ミュージシャンとしての活動を再開。1976年には、ニュー・オーリンズのシーセイント・スタジオでファーストアルバム「ジャンコ・パートナー」のレコーディングを行った。
一方、ブッカーは地元のメイプル・リーフ、ティピティーナス、スナグ・ハーバーといったクラブへ常連で出演。またニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバルにも参加するなど、ライヴ活動も積極的に行っていった。70年代後半にはソロでヨーロッパ公演も行い、各地で熱狂的に迎え入れられ、現地でライヴアルバムのレコーディングやリリースも行っている。
しかし、この頃からブッカーはアルコール中毒と麻薬中毒に加え、精神疾患を患い、体調を崩していった。演奏も調子の良いときと悪いときの落差が激しくなり、また奇言・奇行も目立つようになった。1982年のセカンドアルバム「Classified」のレコーディングの際には直前に倒れて入院する事態となったが、奇跡的にアルバムは完成した。だが、これが彼の生前最後のスタジオ作品となってしまった。
1983年11月8日、コカインの過剰摂取で倒れ、ニュー・オーリンズのチャリティー病院で死去。彼はひとりで救急車を呼び、車椅子で病院の救急治療室で診察を待ちながら息絶えた。死因はヘロインとアルコールの常習による腎不全、享年43歳だった。


COMMENT
精神疾患も飲酒も麻薬も無い、音楽のかたまりのジェイムズ・ブッカーが紡ぎ出す音は、歓びと美しさに満ちていたに違いない。
この映画のなかで、様々なものを抱えてはいても、それでもなお彼のピアノはすばらしい。
矢野顕子(ミュージシャン)
ニュー・オーリンズでは誰もがこの人間離れしたジェイムズ・ブッカーを、畏怖と呆れを持って称賛する。現地で見たアラン・トゥーサンとの連弾Liveは生涯忘れない。
奇跡的なこの映画、BAYOU MAHARAJAHと監督、リリー・キーバーに感謝!
久保田麻琴(プロデューサー・エンジニア)
ニュー・オーリンズが生んだ名ピアニストの中で、一般的な知名度を得られずに多くのミュージシャンに天才と崇められたジェイムズ・ブッカーは、摩訶不思議なキャラクターでしたが、彼の演奏を聞けば必ずファンになるはずです。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
ブッカーのドキュメンタリー映画ができたと最初に聞いたときはビックリするやら歓喜するやらで、そわそわしてしまいました。誰もが認める圧倒的なテクニックも去ることながら、その強烈な個性はまさに唯一無二。この映画は、そんな彼の華やかながらも破滅的な人生を見事に描き出しています。貴重な演奏映像だけでも見る価値は十分です。完成から10年あまり。遂に日本の劇場でそれを見られる喜びを噛みしめましょう!
陶守正寛(音楽ライター)
©2016 BAYOU MAHARAJAH,LLC


